保険を検討する時に知っておくべきこと [後編]

前編では、人生の5大出費ともいわれる保険を検討する際に、社会保険の1つである健康保険を知っておくことで、医療保険に過剰に加入することを抑えられる可能性をお話しました。

今回の後編では、同じく社会保険の1つである年金に加入していることが、生命保険を補完している点をご説明したいと思います。(なお、本記事では2016年度(平成28年度)の金額で記載しています)

■目次

1.年金の種類
2.障害年金
3.遺族年金
4.まとめ
5.One More Comment

1.年金の種類

年金と聞くと、「国民年金」とか「厚生年金」といった言葉を聞いたことはありませんでしょうか?また、共済年金や確定供出年金、個人年金...と「年金」と単語が付く用語だけでもいくつも出てくるかと思います。

けど、これらの違いが何かご存知でしょうか?

年金の3つの種類

年金には大きく分けると以下の3つの種類があります。

  • 公的年金
  • 企業年金
  • 個人年金

 

公的年金の種類

「公的年金」を詳しく見ると、2つの種類があります。

  • 国民年金   :20歳以上60歳未満で、日本に住所がある人全員が加入必須。
    国籍は問わないため、日本在住の外国人も対象。
    主な対象者は自営業者、学生、専業主婦(夫)など。
  • 厚生年金保険 :企業に勤めている人、公務員や教職員の人が加入。
    厚生年金保険の加入者は、国民年金にも加入している扱いになる。

3つの年金給付の種類

「年金」と聞くと、定年退職後に給料の代わりに収入を補てんしてくれる国の仕組みだとイメージされる方は多いと思います。実はそれは年金の3つの給付の内の1つに過ぎません。年金には次の3つの給付が仕組みとして整えられています。これらの給付があるために生命保険だけで全てをカバーしなくても良く、生命保険料の負担を抑えられる可能性があるのです。

なお、この3つの給付制度は国民年金と厚生年金保険の両方がそれぞれに備えている制度です。ですので、自営業者や学生の方は国民年金として3つの給付、厚生年金保険に加入している方は国民年金と厚生年金保険の2種類 x 3つの給付が受けられる仕組みです。

  • 老齢給付  :多くの方が年金と聞いてイメージされる給付。
    当サイトを訪れることの多い、2017年時点で20代~40代の方は
    原則として65歳から受給開始。
  • 障害給付  :障害を負った際に給付される。年金に加入していれば年齢を問わない。
  • 遺族給付  :年金加入者が亡くなった場合に遺された家族に給付される。
    年齢を問わない。

今回の記事では年金が生命保険を補完できる要素を持っていることを説明するのが趣旨のため、老齢給付には触れず、障害年金と遺族年金について以下で説明してきます。

 

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2.障害年金

給付の対象になる条件などに触れていくと、条件がかなり細かく設定されているため本筋が分かりづらくなります。そのため、どの程度の金額が給付されるのかといった規模感を中心に触れていきたいと思います。

障害基礎年金

国民年金に加入している方が障害を負ってしまった時に給付されるのが「障害基礎年金」です。

この年金額は家族構成や障害の等級によって変わってきますが、以下の式で計算されます。

障害基礎年金額 = 基本額 + 子の加算額

「基本額」は国民年金加入者本人が負っている障害の等級に応じて給付される年額です。

  • 1級  :975,100円(2級年金額の1.25倍)
  • 2級  :780,100円(満額の老齢基礎年金と同額)

「子の加算額」は国民年金加入者に子供がいる場合に加算される金額で子供の人数が多いほど以下の金額が加算されていきます。

  • 1人目および2人目の子 :1人につき224,500円
  • 3人目の子以降      :74,800円

※2016年度(平成28年度)の金額

よって、万が一事故や病気によって障害を負い、1級の認定を受けることになった方に子供が2人いた場合は以下の金額が障害基礎年金額として受給できることになります。

基本額 (975,100円) + 子の加算額 (224,500円 x 2人) = 1,424,100円

障害厚生年金

厚生年金保険の加入者が障害を負った場合は、「障害厚生年金」が給付されます。上記の障害基礎年金に上乗せして支給されます。

障害厚生年金は障害の認定が3級で受給できる点や、子の加算はなく配偶者の加算がある点、加入月数や平均標準報酬額によって金額が人によって変わる点が障害基礎年金と異なっています。

障害の等級による給付額は以下の通りです。

  • 1級  :障害厚生年金額 x 1.25 +配偶者加給年金額 (224,500円)
  • 2級  :障害厚生年金額 + 配偶者加給年金額 (224,500円)
  • 3級  :障害厚生年金額 のみ(最低保証額 585,100円)

障害厚生年金額は以下の計算式で求められます。

  • 障害厚生年金額 = 以下の①+②

①平均標準報酬月額 x 7.125 / 1000 x 平成15年(2003年)3月以前の加入月数

②平均標準報酬額 x 5.481 / 1000 x 平成15年(2003年)4月以降の加入月数

※加入月数が300月(25年)に満たない場合は、300月として計算。

よって、例えば2007年に就職(厚生年金に加入)し、2017年に事故で障害を負って3級に認定され給付を受けることになった場合は以下の金額が支給されると考えられます。(シンプルにするため、給与の支給額は毎月30万円と仮定)

障害厚生年金額 = 300,000円 x 5.481 / 1000 x 300(実加入月数が300月未満のため)
= 493,290円

最低保証額 585,100円 より 493,290円は低い金額になるため、このケースでは585,100円が毎年、障害厚生年金として障害基礎年金に上乗せして支給される計算となります。

※2007年(平成19年)に就職のため①は該当しないので0。②だけで計算。

実際の生活費への足しとしては、まだ十分といえる金額ではありませんが、民間の保険で追加せずとも年額約60万円分を実はすでに入っている保険で補うことができると考えたら、加入すべき保険の前提がかなり変わってくるのではないでしょうか。

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3.遺族年金

遺族年金も国民年金と厚生年金保険でそれぞれに制度が設けられています。

遺族基礎年金

国民年金の場合、加入者が亡くなった後、遺された家族には「遺族基礎年金」が支給されます。

遺族基礎年金は子供がいることが条件で、子供の人数によって年金額が変わります。また受け取れるのは「子供がいる配偶者」もしくは「子供」です。(配偶者と子供がそれぞれ受け取れるわけではありません)

子供がいる配偶者が受け取る遺族基礎年金額は以下の通りです。

  • 子供が1人もしくは2人 :基本額780,100円 + 子供1人につき224,500円
  • 子供が3人以上      :上記金額 + 3人目以降の子供1人につき74,800円

配偶者がおらず、子供だけが遺されている場合に子が受け取る金額。

  • 子供が1人  :基本額780,100円 のみ
  • 子供が2人  :基本額780,100円 + 224,500円
  • 子供が3人以上:基本額780,100円 + 224,500円 + 3人目以降の子供1人につき74,800円

※年金で子供と言った場合、18歳になる年度までを指します。

子供がいない場合、遺された配偶者に何も支給されないのかというと必ずしもそうではありません。条件によっては「寡婦年金」や「死亡一時金」といった制度もあります。ただ、具体的な内容は本記事では割愛致します。

遺族厚生年金

厚生年金保険の加入者が亡くなった場合には「遺族厚生年金」が支給されます。

遺族厚生年金の金額の計算式は以下の通りです。

  • 遺族厚生年金額 = (① + ②) x 3/4

①平均標準報酬月額 x 7.125 / 1000 x 平成15年(2003年)3月以前の加入月数

②平均標準報酬額 x 5.481 / 1000 x 平成15年(2003年)4月以降の加入月数

※加入月数が300月(25年)に満たない場合は、300月として計算。

遺族基礎年金と違って、子供の有無や人数とは無関係なこと、金額が3/4になることが主なポイントです。

この他、子供が19歳以上になると、遺族基礎年金が支給されなくなることから、厚生年金では「中高齢寡婦加算」といった制度もあり、遺族基礎年金を補てんする仕組みがあるなど、条件によっては様々な補てん制度や、逆に給付に対する制約があります。

ここでは、上記の金額を受け取れる可能性があることをまずはご認識ください。

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4.まとめ

年金は条件や制約が厳しく設定されており、自分、もしくは自分の家族がどれだけの給付を受けられるのかは一目見ただけでは掴みづらい制度設計になっています。

詳細に理解しようとすると、「年金」というテーマだけで本が一冊は書けてしまうので、本記事では詳細は割愛しました。まずはここでは、

  • 加入義務になっている公的年金だけでも老齢給付以外の保障があること。
  • 家族構成によっては年間100万円以上の給付が何年間にもわたって続くこと

といった点のイメージを掴んで頂ければ幸いです。

生命保険に代わるものとしては金額が少ないように思われるかもしれませんが、例えば年間100万円の給付が10年間続くだけで1,000万円の保障となります。これを民間の生命保険でカバーしようとすると年間いくらの支出になるでしょうか?

誤解しないで頂きたいのは、公的年金だけで万が一の時の保障が十分とはお伝えしておりません。ただし、保険は大きな支出でもあります。ですので、公的年金による保障を前提に考えた上で、あなたの環境では後いくらの保障があれば安心できるのか?このように考えることで生命保険にかける支出を必要最低限に抑えることができるという視点を本記事ではお伝えしております。

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5.One More Comment

年金は毎年支給額や納付金額が変わったり、制度が変わるため、かなり割り切らないと短くお伝えするのが困難なテーマです。

ただ、へたな民間の保険に加入するよりはよほどリターンの大きい保障につながるため、「年金は危ない」という噂だけで国民年金の納付をやめてしまうのはリスクが大きいものだと思いますので、ぜひ広い視野で年金に興味を持って頂けたら幸いです。

それでは、明日も良い日を!

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