企業分析の視点として大別される2つの分析視点があります。
1つが「テクニカル分析」。チャートの動きから買い時売り時を判断する分析法です。
もう1つが「ファンダメンタル分析」。財務状況や業績、資産価値、株価などから分析対象の株式が割安かどうかなどを判断する分析法です。
PER
ファンダメンタル分析(ファンダメンタルズ分析とも言われます)で使われる指標にはPER、PBR、ROE、ROA、、、など複数の指標がありますが、本記事では投資初心者でもよく耳にするPERをご説明します。
PERの概要
PERは英語でPrice Earnings Ratioの頭文字を取った略語です。日本語では株価収益率と表現されます。この単語だけでは何のことを指しているのか全く分からないですね。。
これは企業の利益と株価を比較する指標です。現在の株価が企業利益の何倍になっているのかを見て取ります。多くの企業は今年度の業績予想を発表しています。業績予想の内「1株当たり純利益」と「現在の株価」を使って計算します。計算式は以下の通りです。
PERの計算
現在の株価 ÷ 1株当たり純利益 = (予想)PER
株価は現在の数字ですが、1株当たり純利益は将来の予想数字を使っています。そのためここで算出されるPERも「予想PER」という言い方をしたりします。
PERは数字が小さいほど、一般的に「割安」と考えられています。
PERの計算方法
例えば、株主優待銘柄として人気を誇るコロワイド(7616)と、不動産投資で有名なシノケングループ(8909)の2社を見てみましょう。株価は2017年8月17日の終値とこの時点で発表されている今年度の1株当たり純利益を用いて計算しています。
コロワイドの例
株価2,048円 ÷ 1株当たり純利益38.76円 = 約52.8
シノケングループの例
株価2,459円 ÷ 1株当たり純利益468.89円 = 約5.24
PERは株価が1株当たり純利益の何倍になっているかを計算したものですので、単位は「倍」で表現されます。つまり、コロワイドはPER52.8倍、シノケングループは5.24倍と言えます。
PERを使って比較する
PERはそれ単独ではあまり意味を持ちません。他の数字と比較することで位置付けがより明確になります。
例えばコロワイドは東証1部に上場していますので、2017年8月17日時点の東証一部の全銘柄の予想PERは15.5倍。この15.5倍とコロワイドの52.8倍を比較すると、コロワイドは市場平均よりもかなり「割高」に買われているという見方ができます。
一方で、シノケングループはジャスダックに上場しています。この日のジャスダックの予想PERは17.9倍。これとシノケングループの5.24倍を比較すると、シノケングループはかなり「割安」の株価で放置されているという見方ができます。
ここでは分かりやすく見るために市場全体との比較をしましたが、同業他社と比較するとPERを用いた分析としてはより鋭さを増します。
いずれにせよ、このようにPERという指標を算出し、分析対象の企業のPERが市場や同業他社に比べてどのような位置付けなのかを見ることによって、既に他の投資家に後れを取っているのか、割安なタイミングを見つけられたのか、といった考え方をすることができます。
もちろん、割安には割安の、割高には割高の理由がある場合もありますのでPERだけで株の投資判断を下せるものではありません。ただし、何も手がかりがない中で売買するよりは、いくらか妥当性のある判断を下そうとする時には有効な指標となります。
市場のPER
株価は毎日変動しますので、市場全体のPERも毎日変動します。
日々のPERを知りたい時には日経新聞の以下サイトが便利です。
http://www.nikkei.com/markets/kabu/japanidx/
毎月の変動を知り、流れを見たいという場合には日本取引所グループの統計情報のサイトが使いやすいです。
http://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/misc/04.html
One More Comment
PERだけで投資判断を下すことは危険ですが、試しに気になる銘柄をいくつかチェックしてみましょう。1株当たり純利益は四半期決算で発表される決算短信の1ページ目の一番下に記載されていることも多いので、この機会に決算短信に慣れてみましょう。
そうやって決算短信を見てみたり、PERを計算してみると、1株当たり純利益がいくら程度だと他社より儲かっていると言えるのか、割安のPERと言えるのか、など自分なりの感覚値を掴むことができます。
一見難しそうに見えますが、実は小学生でもできる計算式です。
楽しみながらトライして、早い内に感覚を掴んでしまうと今後が楽になります。
それでは、明日も良い日を!